表示中のスキーム:事業譲渡
かえでは札幌市の住宅地に立地する全38室のサービス付き高齢者向け住宅です。直近の入居率は約92%(35室入居・別途2室入居予定)。 事業譲渡スキームでは、不動産は売主側に残し(賃貸または別途売却)、運営に関する営業権のみを譲り受ける形を想定します。
株式譲渡スキームでは、株式会社メープルリーフの全株式を取得し、土地・建物(自社保有)、現預金、投資その他資産、借入金を一体で承継します。 かえでの経済価値の中心は自社保有する不動産にあり、株主価値は時価純資産法で説明されます。
サービス付き高齢者向け住宅「かえで」
札幌市北区南あいの里の住宅地に立地。鉄筋造の低層建物で、明るい共用ダイニング・ラウンジ、バリアフリー対応の居室、ランドリーや在宅介護支援機能を備えています。 居室は20㎡前後(Aタイプ)から30㎡前後(Cタイプ)まで複数タイプを用意し、月額目安は8万円台からです。要支援〜要介護1の入居者が中心で、相対的に手厚い介護を要する層が少ない構成となっています。
札幌市北区南あいの里。最寄り駅から徒歩約1分で、近隣に集合住宅が集積する生活利便性の高いエリア。
全38室。直近入居者一覧(2026年5月時点)で35室が入居中、2室が入居予定、空室2室。実質稼働は約92%。
土地・建物を自社保有。簿価は土地35,355,551円、建物等合計115,128,520円(建物・附属設備・構築物)。
株式会社メープルリーフ 決算報告書(第11〜13期)より。単位:円
直近3期の決算書を確認したところ、売上高は約1億円規模を維持する一方、営業段階では各期とも赤字が続いています。第13期の当期純利益が黒字(+11,314,153円)となっているのは、固定資産売却益・投資有価証券売却益など特別利益(合計約7,717万円)による一時的な要因であり、本業の収益力を示すものではありません。
| 決算期 | 売上高 | 営業損益 | 経常損益 | 当期純損益 |
|---|---|---|---|---|
| 第11期 (令和5年度) | 104,213,168 | ▲35,227,473 | ▲39,288,698 | ▲10,384,231 |
| 第12期 (令和6年度) | 103,553,380 | ▲43,012,713 | ▲46,429,697 | ▲27,529,058 |
| 第13期 (令和7年度) | 96,777,232 | ▲47,185,852 | ▲50,849,487 | +11,314,153 |
| 主因 | 役員報酬・人件費・減価償却が固定費の中心。第13期の純利益は固定資産売却益等の特別利益による一時的なもの。 | |||
譲渡後に承継しないコストの控除
現在の損益には、代表者(役員)の役員報酬が含まれています。譲渡後は現体制の役員を引き継がないため、この役員報酬は買い手の費用としては発生せず、コスト構造から単純に控除できます。 役員報酬は第13期で26,700,000円(第11期24,000,000円、第12期24,675,000円)にのぼり、これを戻し入れた「正常化後」の損益は、ヘッドラインの赤字よりも大幅に改善します。
| 決算期 | 営業損益(実績) | 役員報酬 戻し | 正常化EBIT | 減価償却 戻し | 正常化EBITDA |
|---|---|---|---|---|---|
| 第11期 | ▲35,227,473 | +24,000,000 | ▲11,227,473 | +19,715,500 | +8,488,027 |
| 第12期 | ▲43,012,713 | +24,675,000 | ▲18,337,713 | +21,734,186 | +3,396,473 |
| 第13期 | ▲47,185,852 | +26,700,000 | ▲20,485,852 | +23,808,952 | +3,323,100 |
DCF法による事業価値の検証を起点に、営業権は「正常化EBITDA × 5倍」、株式価値は「時価純資産法」で算定しています。
算定の考え方(DCF法): 正常化後の営業利益を起点に、税負担を控除し、減価償却を戻し入れ、維持的な設備投資・運転資本の増減を差し引いてフリーキャッシュフロー(FCF)を求め、WACCで現在価値に割り引きます。継続価値は永久成長率を用いて算定し、同じく現在価値に割り引きます。
事業譲渡では不動産は対象外(売主側に残置)とし、運営に関する営業権のみを評価します。営業権は、代表者の役員報酬を控除した正常化EBITDA(直近 約332万円)に、 サービス付き高齢者向け住宅の事業譲渡で用いられる市場倍率 5倍を適用して算定します(約1,660万円)。建物賃料はオーナーとの賃貸借契約として別建てで整理するため、営業権の評価からは切り離しています。 現状の収益力ではこの水準が上限の目安であり、これを超えるには満室化・要介護度ミックスの改善でEBITDA自体を引き上げる必要があります(再生ケースで約2,000万円前後)。
株式譲渡では会社を一体で承継するため、株主価値は時価純資産法を主たる手法とします。簿価純資産(70,747,949円)に、土地の含み益(時価−簿価)を加え、含み益に対する税効果(実効税率31%で控除)を差し引いて算定します。建物は保守的に含み損益なしと仮定しています。
| 土地時価 | 含み益 | 税効果(31%) | 時価純資産(株主価値) |
|---|---|---|---|
| 100,000,000 | 64,644,449 | 20,039,779 | 115,352,619 |
| 110,000,000 〈基準〉 | 74,644,449 | 23,139,779 | 122,252,619 |
| 130,000,000 | 94,644,449 | 29,339,779 | 136,052,619 |
| 160,000,000 | 124,644,449 | 38,639,779 | 156,752,619 |
事業譲渡(営業権の譲渡)の流れ
運営状況・入居者契約・許認可・人員体制・委託先などを確認し、譲渡範囲(営業権・什器備品・契約地位の承継)を確定します。
営業権の譲渡対価を確定するとともに、不動産は売主から買い手(運営者)への賃貸借契約として整理します(賃料・期間・原状回復等)。
従業員の転籍、入居者との契約の再締結・承継、行政手続(事業者変更)を進めます。
役員体制を引き継がないため役員報酬相当のコストが解消。買い手は正常化後のコスト構造で運営を開始します。
株式譲渡(全株式の取得)の流れ
財務・税務・法務・労務に加え、不動産(土地・建物)の権利関係、長期借入金97百万円の条件・保証を精査します。
全株式の譲渡対価(時価純資産基準)と表明保証・補償条項を取り決めます。許認可・入居者契約はそのまま会社に残るため承継が円滑です。
金融機関との協議により、長期借入金の承継・代表者保証の解除等を整理します。
不動産を含む会社を一体取得。買い手は役員体制を刷新し、正常化後のコスト構造と不動産価値を前提に経営します。